説明できない美味しさ


使っている素材は群を抜くというほどのものではありません。でも、じんわり美味しい。


きらびやかな盛り付けでもなく、奇抜なアイデアというほどの驚きもありません。でもしっかりとした味わいを感じる。


そういうフレンチを作る方がいます。


日本料理ならどうして美味しいのか、どういう趣向がお客様に訴えるのかを説明することができると思います。が、異国の料理は説明ができません。ちゃんと美味しいとしか言いようがないのです。


漠然とした言い方で申し訳ないのですが、地に足のついた味わい・・・・とでも言ったらいいのでしょうか。


今風に絵筆を走らせるようにソースを流したり、シーブレットを立て、立体的な盛り付けでお客様の目を奪ったりすることはあっても、味わいは借り物のように居心地の悪いフレンチもあります。それなりに美味しいのですが、ハートを鷲?みにするような力を感じることができない・・・・・これも漠然とした言い方ですね。やっぱり説明は難しいです。


何が違うのでしょう。


わかりません。


カウンター越しに目の前で料理をしているのを拝見すると、職人だからわかる技術の安定感があります。当たり前のことを実に手際よく、やっつけ出ない仕事であることは、分野は違っても手仕事を生業にするもの同士には体の流れを見ただけでわかるものです。


真っ当な仕事が真っ当に美味しいとしか説明できないものですから、この美味しさや職人にはわかるこの技術を一般の方すべてにお奨めできるか・・・・というとちょっと躊躇します。


ちゃんと美味しいことはわかっていただけても、その力強さを感じていただけるか?


「なぁんだ、普通ジャン」と思われるかもしれません。


でも私、ファンです。


「あずまや」さんというフレンチ・レストランです。