試飲と評価


初めて手に入ったお酒を最初にまず飲むのは私です。うれしい。


日本酒の場合、開栓しても温度管理をちゃんとすれば即劣化することはありませんから、試飲して味を確認してからお客様に出すのは当然です。


幸いなことにどれほど高価な日本酒でも私が最初に飲めます。


ところが酒屋さんとなると、一度開栓してしまえば売り物になりません。入荷が少ない稀少で高価なお酒は気軽に試飲することもできません。一種類のお酒を何百本も売り、お値段もお手頃なら試飲することなど簡単なお話ですが。


で、
熱心な酒屋さんは「試飲会」や「日本酒の会」を開いて自分でも味を確認しています。「ワイン会」ってのも同様です。お金も取れて自分で味も確認できる上手な方法です。


酒屋さんもお客様にお酒を奨める場合には、自分の舌の評価をもとにして、お客様の希望に見合ったお酒を選ぶわけなのですが、聞けば料理店以上に苦労されるようです。


日記では何度も言っているように、お酒の評価というのは人によって千差万別です。誰がどう考えても「辛口」のお酒を「甘い!」と断定する方もいれば、「香りがあるお酒」といわれて奨めたお酒の香りがイメージする香りと違ったり、味の許容範囲の広い方であればよいのですが、固定観念にとらわれた方にお酒を奨めるのは全く難しいのです。


私の店の場合、一本のお酒で10人以上のお客様の評価が聞けます。しかも、一人のお客様に何種類ものお酒をお出ししますので、その方の好みや舌の価値観のようなものを理解したうえでのお酒のコメントであれば、評価もより客観的になります。


心穏やかにすべてのお客様のお話を公平に聞く努力をしていくと、一本のお酒の評価もうまくすると酒屋さん以上にたくさん聞けるわけです。


このお酒をこの料理と一緒に出したときに舌にどう感じるか、前のお酒がこうなら、次に持ってくるお酒をどういうタイプにするとさらに美味しく感じるか・・・・などなど、毎日がレッスンと言えます。


一昨日お話したようにそういうお客様の声が、私の大きな財産となってお酒選びに役立っているのです。