お節料理Ⅶ


私の家庭では正月の一日二日の朝はお雑煮とお節料理に決まっています。お節料理はもちろん自分で作ってお客様に売ったのと全く同じヤツです。


普段の料理はできたての熱々を召し上がっていただくか、お弁当でも仕上がって1時間以内くらい食べていただくことを想定して作るのですが、唯一お節料理は4〜5日をかけて作り、最後に煮たり焼いたりしたものでさえ、一日後に召し上がっていただく仕事をしなくてはいけません。


仕込み、味付の段階ではそのことを念頭に置くのですが、実際にお客様と同じ状況で食べてみなくてはなりません。こんな味にしてみたけれど実際に正月にはどうなっているか、最悪の状態では食材が痛んでいる可能性だってあるのです。同業者の中には正月に百何十件を菓子折りを持ってお詫びに伺ったという方もいるくらいなのです。


お客様の中には「お持ち帰り後はすぐ冷蔵庫へお入れください」の但し書きなど関係なく、暖房がしっかり効いた部屋に置きっぱなしという方だっているわけですから怖いのです。


で、今年のお節のできは・・・・・まっ、少なくとも痛んだ品物はありません・・・・じゃなくて、自信の仕上がりです。自分のことを誉めるのもなんですが、まだ毎年毎年少しづつ上手になっていると思います。この歳になって上手になるというのは、今までがそうとう下手だったのか・・・・と言われそうですが、一年に一回の大量仕事の地道な積み重ねですのでご勘弁ください。そんな愚鈍な板前であることは皆さん承知の上だと思います。


世界で一番厳しい批評家である私の大事な人も「うん、まっ、これは美味しいね」といってくれるのですからそれが私には一番の褒め言葉です。