お決まりの


「あけましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします」という決り文句。


年末の「どうぞよいお年をお迎えください」という決り文句が好きです。


別にいまさら好きですと宣言することもないのですが、私には日本人が口にする季節の挨拶の中でも一番好きなお決まりの言葉です。


あなたは大晦日と正月のこの言葉をかわす方が何人いらっしゃるでしょう。


たぶん、家族と親、親族くらいになっているのではないでしょうか。


昔・・・・と昔のお話を新年早々なんですが・・・・サラリーマンが充満していなかった頃、商店は大晦日までやるのが当たり前でした。最後の最後まで仕事をしてその年の一年を納めたのです。知り合いの肉屋さんも「除夜の鐘を自宅で聞いたことなどなかったねぇ」といいます。


新年も「お年始まわり」をするのが当たり前でした。家族や親、親族に新年の挨拶をするのはもちろんですが、一年お世話になった方々、これから一年お世話になる方々がお宅に伺ってご挨拶するのも当たり前であったのです。


仕事関係は大事でした。上司のところにお年始に行かないヤツは無礼なヤツでした。お得意様に伺わないヤツは仕事を減らすかもしれませんでした。


学校だって正月は登校して新年を挨拶をしていました。


正月はのんびりするものではなくて、あいさつ回りで忙しいものでした。


「もうそんな面倒なことをやめようよ」というのもよくわかります。12月大晦日いっぱいまでしゃにむに働いたのだから、正月くらいゆっくりしよう、とあいさつ回りは次第に廃れていきました。あいさつに来られるのも疎まれ始めました。


正月に温泉にいったり、海外で過ごすことを「きっと一生私にはできない夢の仕業」と思っていたのに、世間のごたぶんにもれず、私にも正月はのんびりするものになりました。


疲れた身体にも精神にもとてもいいことなのですが、ここまでくると形式美にも心残りがでてきました。


日本がひたすら物の豊かさと心のゆとりを追い求める中で、面倒くさいもの、形式的なもの捨てていったことを振り返ると、効率よく楽をして働き、楽しく暮らすことだけでなく、日本人が培った季節の美しい形をちゃんと身につけてことも必要なのではないかななどと思っています。


こんな風に思うのは正月も迎えてまた年をとったということなのでしょうかね。