手こね寿司


タウン誌の来月の特集が「お寿司」ということで、手こね寿司の撮影取材をしました。


ぶつ切りにした鰹を醤油につけ、寿司飯に混ぜ合わせるというこのお寿司は三重県伊勢志摩あたりの郷土料理です。


元々は料理が船上で作ったまかない飯だと聞きます。釣れたばかりの鰹を、用意しておいた寿司飯で食べると言うのは全く理にかなっています。


ヅケにした鰹をご飯に混ぜるのは不思議と手がよろしいようです。杓文字だと飯に入り込みにくく感じます。手に絡まった醤油もほどよい味付けになります。


このお寿司、今ではとてもメジャーなお寿司になりましたが、初めて食べたのは20年以上前、志摩出身の職人が自分の処の郷土料理として食べさせてくれたのが最初です。


「へーーー、こんな寿司があるのか」と興味津々だったのを憶えています。


当時はまだまだ、知られていない郷土料理や地方の食材がたくさんありました。情報も流通もそんなものだったのですね。比べてみると爆発的な情報革命、流通革命を実感できます。


昭和初期、魯山人が星ヶ岡茶寮で「来たれ全国料亭の跡継ぎ達」と調理場の新人募集をしたそうです。地方の跡継ぎ達が郷土料理を携えて勉強に来ることで、地方に伝わる料理を研究できるという一石二鳥の名案です。


今では「○○」という知らない料理でも、コンピューターで検索一発、レシピからどこで食べられるかまであっという間にわかってしまう・・・・いいもんなのか悪いもんなのか。


旅行をして地方の名物を食べると言う時代は、もうすぐなくなってしまうかもしれませんね。