兵庫産山田錦


酒米の最高級といえば、兵庫産の山田錦です。


全国新酒鑑評会へ出品される多くのお酒が兵庫産山田錦で造られ、各蔵で市販される最上級の大吟醸の多くも兵庫産の山田錦で造られています。さほどに品質が素晴らしいのです。


その兵庫の山田錦が生産が危機に瀕しているというのです。


熱心な酒屋さんの談です。


兵庫の生産農家の平均年齢が60歳を超え、後継者に悩む・・・・というよりは「農家は継ぐな」と息子に語り、「農家には嫁に行くな」と娘に諭しているのが現状だというのです。


都会に住む私達は、簡単に土と共にくらし、自然の中に生き、生産することの喜びを感じ、と単純に農業の生きがいを夢に描いてしまいます。ところが酒米のなかで最も高価で取引され、全国で引く手数多の兵庫の山田錦の生産者でさえ、その労働の苛酷さと割に合わない収益性に諦めを感じているのです。


後継者がなく、手放されてしまう山田錦の田んぼを、全国の志のある蔵元が集まって買い取り、生産をつづけようという試みを始めているのだそうです。


蔵が自らの田で酒米を生産し、酒造りをする・・・・・という今までの日本酒の世界では語られなかった新しい歴史が実現すればよいのですが、時間はまだまだかかりそうです。


それよりも今の生産者がもっと頑張れば、といっても60歳を過ぎた農家さんに新しい試みをとか、美味い日本酒のためにさらに気力・・・・というのは酷ですよね。


フランスやアメリカのようにビジネスで成功した実業化が、引退後ワイン畑を買い取ってシンデレラ・ワインをというのと同じように、日本の経済界の成功者が田んぼを買い取り、山田錦を汗水たらして作る・・・・ってのは絶対ありそうにない。