名人


この方からお借りして、お父様のライブラリーから貴重な昭和の落語名人達のテープを聞いています。


志ん生文楽今輔正蔵、小さん、柳好、可楽、円歌などなどなど


志ん生文楽をしっかり聞くのはほとんど初めてなのですが、なるほど私のような素人が聞いても惹きこまれるように面白くて何度も何度も聞いています。


特に文楽の語り口というのは、江戸言葉のリズムと切れのよさのお手本のようで、「正調」と呼びたいほどほどです。こういう耳に心地いい江戸の響きは今はもう聞くことがありません。言葉にもはっきり庶民の歴史の流れがあるのだなと感じられます。きっと若い方が聞けば意味のわからない言葉がたくさんあって、意味不明な古典を聞かされるような気分になるかもしれないのですが、少なくとも私には祖父の言葉のように懐かしさは感じられても、手垢のついたような古さには思えません。


今盛んに聞いている志ん朝も、何年か後には間違いなく文楽と同じように名人として語り継がれると確信しているのですが、彼の語り口は私にとっては文楽から見ると「現代」そのものです。とはいうものの、喋り言葉の変化のスピードが以上に速い今のご時世では、志ん朝が歴史になってしまうのはアッというかも・・・・・ということは私自身の頭も歴史になってしまうということでしょうか。。。。


落語を芸術に祭り上げてしまったから庶民から離れていった、などといわれますが、こうして文楽志ん朝と聞けば、芸術であるかどうかはともかく、やっぱり語り継ぐべき文化であることは間違いないのだと思うのです。左様に素晴らしい稀有な落語家です。