原価は?


「おから」は「笑えば貰える」というほどお安いものです。1kgで30円くらい。


人参、牛蒡、こんにゃく、きくらげ、干し椎茸などをいれてたっぷり焚いて常備菜にしておきたいお惣菜、栄養もたっぷりです。コツはおからのをしっかり空煎りすること、野菜類は下煮しておくことです。


料理屋ではおからは別の方法で使います。


おからをザルに入れて水の中で漉していきます。ザルの目を通った、粒の揃った細かいものだけが水の中にとけます。それをさらに晒し(サラシ)で漉してしっかり絞ることで下の写真のような状態のものが出来ます。しっとりした雪のようなおからです。





これに酢、砂糖、薄口醤油、塩、卵黄などを入れて湯煎にかけます。


大きな鍋に湯を沸騰させ、鍋を二重にして直接火にかけるよりも柔らかく火を通しておく手法です。焦げ付きやすもの、ゆっくり火を入れたいものにはこの湯煎が必要です。


右がおから、左はお刺身や焼き物に使った鮮度のいいお魚の中骨を素焼きにして、身をせせり甘辛く味付けしたおぼろです。


両方を同時進行で約4-5時間煎っていきます。気長に気長に





仕上がり時間は違うのですが、両方ともさらさらに粉のようになった状態のものです。


右側がうっすら酢の味がついたおから、「卯の花」と呼びます。


左側は鱸や一味鯛、甘鯛などのおぼろ、「鯛めし」の素です。


卯の花」はこの時期の鯵などを酢〆にして「卯の花和え」にします。ふんわりした食感の酢の物は繊細な日本料理らしい一品ですね。


両方とも原価はただ同然、ひたすら手間をかけてあげるだけの品物です。面倒くさいとか人手がないとか言っていると、自然にやらなくなってしまいます。前菜のほんの一口、しかもメインたる魚にまぶすだけのものに6時間近くをかける・・・・・というのは自慢ではなくて、職人が昔からずっとやりつづけている真っ当な仕事です。