職人受難の時代


長い間私ン処で勤め、10年ほど前大きな料理店さんへ移った職人が久しぶりにやってきました。


新たに店を移ったことの報告のためでした。これまでいた大手の料理屋さんは給料はいいものの労働条件が厳しく、身体を壊す寸前だったということです。


この不況の時代、手に職があるとはいえ、新たにそれなりの職場を見つけるのは大変なようです。いま臨時の助っ人で勤めている観光ホテルは、調理長も技術のある方らしいのですが、客単価と原価率が抑えられた料理は冷凍物と養殖物、出来合いの珍味類を使わざるをえないようで、仕事への張り合いはどうしてもなくなってきて・・・・と愚痴が出てしまいます。


大きな料理店やホテルは、技術のある職人さんをたくさん抱えていい仕事をさせると言う時代ではなくなってきています。企業としての利潤を追求するためには、コンセプトと言う名の下にマニュアルでできる献立を、経験が少なくても人件費の安い人材を使って作るという形も視野に入れなくてはいけないと聞きます。


技術があり、仕事に熱心な板前ほど給料が高い分だけ雇う側からすると厄介な存在になる可能性があります。


私など技術がなくて給料が安くても、能書きが多い分だけ嫌がられる可能性大です。


このまま企業型の料理店が増えれば増えるほど職人の存在は煙たがれ、何年か後には職人のいない料理界になる事だってあるかもしれませんね。