書き物の関係で日本料理の作法、ことに箸のついて調べていると一般的に知られる「迷い箸」や「さし箸」「ほとけ箸」以外にもたくさんあるのに驚きました。


「さぐり箸」::箸で椀の中の実をかきまわしたり、何かあるかとさぐってみないこと。


「もぎ箸」::箸にくっついたご飯粒を口でもいで食べたりされないこと。


「なみだ箸」::たれのあるものを膳から直接箸でとって、ポタポタとしずくを落とさないこと。


「迷い箸」::どれを食べようかと、箸を膳の上でウロウロさせられないこと。


「ねぶり箸」::箸のをしゃぶらないこと。


「そら箸」::食べようとしていったんはさんだものを離して箸を引かないこと。


「さし箸」::料理をつきさして口へ運ばないこと。


「ごじ箸」::盛りつけてある料理の下のものをほじくり出して食べないこと。


「こみ箸」::口の中へ箸で食べ物をおしこまないこと。


「せせり箸」::箸で歯のあいだに詰まったものを掃除しないこと。


「たたき箸」::箸で膳や器をたたかないこと。


「寄せ箸」::飯椀や皿を箸先で移動させないこと。


「固め箸」::箸先で飯を固めてから口に入れないこと。


「ほとけ箸」::よそったご飯のまん中に箸を立てないこと。


「および箸」::遠くの器に箸をさしだして食べないこと。


「回し箸」::湯や茶をついだ茶わんの中へ、香の物を入れてかき回さないこと。


いやいや、あれもいけない、これもいけないといっぱいあるものです。


どれをとっても小さい頃、母親からお小言をもらいながら身につけたことばかりで、いまさら言うまでもないのでしょうが、それにしてもこれだけいっぺんに並べ立てられると「そのくらいわかってるよ!」と反抗したくなるほど小姑っぽですね。


でも、やっぱり一緒に食事をしている方に、こんな風にされるとあまりいい気持ちはしません。作法と言うのは結局、まわりの方をいやな気持ちにさせないっていう一言に尽きるような気がします。