仕入れ人


昨日お話したような、産地を特定したり生産者を特定した力のある食材は、直接生産者からいただくこともあるのですが、主には八百屋さん、魚屋さん、珍味屋さん、酒屋さんから仕入れます。


中でも毎日欠かさずに通わなくてはいけないのが魚屋さんと八百屋さんです。


この日記でしばしば私が、どんなに素晴らしく美味しい魚であるかと自慢げに話をすることがありますが、それらはすべて魚屋さんのおかげ、板前はただそれを買っているだけであって私の力でもなんでもありません。


鱧が素晴らしいといっても、その鱧は一般的なセリでは入らない魚屋さんの努力によって入荷することもしばしばです。前にお話した天然鮎にしても釣り人とのコネクションを育てているのは魚屋さんです。一味鯛、白川、星鰈、赤むつ、まだか、甘鯛、平目、鯛・・・・「これは!」という品物はすべて魚屋さんの目利きと仕入れる力によって手に入るのです。


時にそういういい品物はこの地に一本二本というほど稀少なものであることもありますし、本来の季節とは全くずれていることもあります。


が、
信頼のおける魚屋さんの「これは是非!」という一言を信用して外れることはまずありません。


毎日魚を見て触って食べていても、目利きに関してはこの方たちにかなわないのです。魚を見る目と適正な価格で仕入れる能力がなければ、七割を素材に頼るような板前では仕事をしようがありません。


密接で信頼のおける関係が出来上がってこそ、私たちは高いレベルの品物を使わせていただくことができます。


お客様からお褒めの言葉を頂戴できるとしたら、その七割は生産者と仕入れ人のものだと言わなくてはなりません。