お酒の印象


昨日お話したようなお酒の味の印象、味の判断の下し方はどうするかといいますと、当たり前ですが自分の舌が一番大事なのであります。


が、
それ以上にお客様の一言一言が大きな意味を持ってきます。


なにしろ、毎日現場で様々なお客様の様々なお酒の感想を聞いています。極めて主観的なものから、一目置くべきようなするどく論理的で説得力のある表現をなさる方まで、批判的な言葉しか語らない方から、許容範囲が広くてお酒に自体に敬意を払っておられるのが気持ちよく伝わる方まで。


その経験値の蓄積というのは半端ではありません。


多分、酒屋さんよりストレートで早い反応を感じていられる稀有な立場にいると思います。何しろその場で飲んで、その場で美味い不味いを聞いているのですから。それを一組のお客様について3―10種類、時によっては一日のすべてのお客様に違うお酒をお出ししながらです。


すべてのお酒の印象が180度といってもいいほど違うのは面白いほどです。よくいう辛口〜甘口、濃厚〜すっきりのように誰でも口にできる単純でわかりやすい言葉でも正反対であることはよくあることです。


そうなると、お客様に最初にお出したお酒の印象をお聞きしただけで、その方の全体像というのか酒筋もある程度見えてきます。このお酒にこういう判断を下す方には、こういうパターンで続くのがよい、こういう方には別のこのパターンで・・・・となります。


とはいうものの、ひとつひとつのお酒の味の印象や優劣(とは言いたくないのですが)どちらを先に出したほうがわかりやすいかなどの全般的、トータルなお客様の味判断を均一化して探ることができます。


自分のテイスティング感にお客様の言葉を肉付けするようにして、ひとつひとつ印象をまとめていくのです。それは私の店の私のお客様にしか当てはまりませんが、経験の積み重ねとしてはこれほど大きな財産はないのです。


そうやって日本酒のリストを作り上げ、サービスの試行錯誤を繰り返すのです。お酒がどんどん進歩するように私自身も先に進まなくてはなりません。