お酒の順番


ある大手のビール会社の支社長とごいっしょにお見えになったお客様に、日本酒の注文をいただきました。


「△△△」をください。


飲み終わった後、次に


「○○」をいただけますか」・・・・と。


お酒に詳しそうな方でしたので、率直に
「○○はご用意があるのですが、△△△の後ですともしかすると美味しく感じられないかもしれません。よろしければ似た系統の別のものをお持ちしますが」と私。


お酒の出し方には明らかに順番があると思うのです。


もちろん嗜好性の強い品物ですから、すべての方に当てはまるわけではありませんが、順番を間違えて飲んだばかりにせっかくのいいお酒の美味しさが感じられないことがあります。


できることなら、今の口に含んだお酒が一番美味しく感じられるというのが理想的です。やっぱり前のほうが美味しかったな・・・・ではサーブする側が失格です。


料理との相性ということも考慮に入れなくてはいけませんが、日本料理に日本酒でしたら、絶対合わないという組み合わせはそうはありません。それよりも、日本酒の順番の組み立て方でお酒のバリエーションの豊かさや美味しさをより感じていただくようにお出しすることのほうが大切のような気がしています。一本一本が蔵元と杜氏さんの努力の結晶で、酒屋さんの思いが詰まっています。大事に大事に使いたいではありませんか。


というようなことをかいつまんで、講釈くさくならないように、冗談を交えてこのお客様にお話ししました。あくまでご無理のないように。
ご理解いただける方だと思ったのです。


「そんなに大切にお酒を使っていただいているのですか」とお客様。


お帰りのときに名刺をいただくとある酒蔵の専務さん。


プロ相手に生意気なことを言ってしまったと、冷汗がどっと吹き出てきました。素性を明かしといてください、お願いですから。