自慢の品揃え?


お客様にお酒の品揃えをご評価いただくことがあります。


日本酒好きは吟醸大吟醸のラインアップを、ワイン好きはワインの集め方とヴィンテージを褒めてくださいます。


とてもありがたいことなのですが、実を言うとお酒をそろえること自体はそう大したものだとは思っていません。


もちろんそれなりに興味を持って取り組んだ結果ではあるのですが、要はそこそこの見識をもって集めるだけのことです。私の能力と言うよりも酒屋さんと蔵元、造り手の力のおかげで、そういうお付き合いを地道に続ければ、どんな料理屋さんでも可能です。


私ン処の料理屋としての様々なファクターのなかで、一番早くだれもが同じようなことができる部分だと思っています。


一昔前と違って、インターネットや雑誌、書籍の膨大な情報を持ってすれば入手が難しいお酒といっても何とかなるものです。


「私がお客様に生産量200本のお酒です」ともったいぶってご説明したとしても、売るために造られたお酒であれば必ず手に入ります。


酒屋さんとのいいお付き合いができれば、案外お酒のほうからやってきたりします。


お客様にはなかなか納得してもらえないのですが、料理屋としての力を<10>とすると、お酒を集めるのに注ぐ力と言うのは<1>くらいのもので、料理が<4>、サービスに<2>、器、しつらえ小物に<1>その他・・・・と言ったところでしょうか。


だれでもできる作業だと思うと自慢にするのはおこがましい、お酒の美味しさを知ってしまった料理屋さんならあっという間に同じ土俵にやってくるという危機感を持っています。同じようなことをしたくてもできていない料理屋さんはまだその事実を認識していないか、難しいと思い込んでいるだけなのだと思うのです。


大切なことは集めたお酒をどのようにお客様に提供するかです。そこん処は厳しいお客様に鍛えられてある程度の積み重ねはできたのかもしれません。まさにお客様のおかげです。