酒屋さんとのお付き合いその3


大吟醸が注目され始めた20年近く前、大吟醸一本いただくのに回りの下物(普通酒など)をたくさん買わないともらえないという状況がありました。


いまでも人気のお酒を買うのに、「抱き合わせ」で他のお酒を何本か買わされることがあります。(私はそういうものには手を出しませんが)


一昨日お話したように、離れた町の酒屋さんにあるお酒を目当てで電話をしたら、「同じ地区にその酒を送ってお付き合いをしている飲食店があるので、申し訳ありませんがお付き合いできません」という顛末もありました。


この件の場合は、飲食店さんの方から「近所に同じお酒があるのは困るので・・・・」という要望があったようです。


私にしてみれば、原因となったお酒はこの酒屋さんにしかないものではありませんので、この件で酒屋さんにも飲食店さんにも悪印象さえ持つ気さえおきません。ただ、「いまどき、そんな時代おくれな・・・」と一種類の銘柄のためにお付き合いを制限される、件の酒屋さんこそお気の毒と思ってしまいます。


ネットを始め情報が氾濫する現在、「絶対に手に入らないお酒」というのはそうたくさんはありません。お金さえだせば何とかなるものですし、正規のルートやより廉価な価格のものも、じっくり手をかけて探し、お付き合いを大事にすれば自然と手に入るものです。


事実私ン処で扱う有名な銘柄のいくつかは、お向かいのがんばっている居酒屋さんにも置いてあります。双方とも違うルートとはいえ、がんばった結果です。私はそのことで微塵も困ったとは思いませんし、お向かいさんも同様です。


むしろ、そんな酒に頼った商売しかできなくなったとしたら、それこそが困った状況です。


どんなに幻の銘酒をそろえてあるとしても、それだけで商売をするわけではありません。努力の末に手に入れたお酒だとしても、それは店を形作るほんの何十分の一の要素です。


料理屋と酒屋、お客様を取り巻く今のお酒の状況を正しくとらえられなくなったとしたら、引退の時は近いかもしれません。


日本酒、ワイン、焼酎は酒質だけでなく、環境も今まさにめまぐるしく変化しているのです。