文七元結


タウン誌のコラムを書くために、何度も聞いている古今亭志ん朝さんの「文七元結(ぶんしちもっとい)」をウオーキングの最中に再再度聞きつづけました。


昨年の秋以来、20-30題くらいの志ん朝さんの落語を聞きつづけています。一時期同じようにたくさん聞いた枝雀さんの話に比べて、ひとつひとつの密度が異常に高いことに驚かされます。枝雀さんの炸裂するおかしみのパワーも大好きではあるのですが、志ん朝さんの場合の濃密さは特別です。


「ワイン真髄を知りたければ、ラフィットとラ・ターシュだけを飲みつづけるのが早道である」
「食材の持ち味という言葉の本当の意味を知りたければ、京都"千花"だけに通いつづければよい」


莫大な資金が必要ですが。


物の本質を知るには最上級を味わいつくせばよいということなのでしょう。


これが落語なら、


「落語は志ん朝さんだけを聞けばよい」といっても、ご本人が亡くなってしまった今はCD出しか聞けませんから、すごい資金はいりません。


中でも、「文七元結」は私のような付け焼刃の素人が聞いても素晴らしい。何度聞いても泣き、笑い、感動してしまいます。


志ん正、馬正と受け継がれる血の濃さと、絶え間ない修練がなせる芸の結晶です。


一度でもこういう芸人の生の高座に触れておくべきでした。無念。