酒屋さんとのお付き合いその2


昨日お話したように、料理店にとって酒屋さんとのお付き合いはとても大事です。


私ン処でも、何軒かの熱心な酒屋さんのおかげで今のお酒のラインアップが出来上がっています。ひょんな事からお付き合いが始まる場合、一生懸命探していたお酒を扱っていることから始まって徐々に親交が深まっていく場合、反対に品揃えに進歩がなかったり、意欲を感じられなくなって疎遠になる場合、様々なケースがあります。


今のお付き合いを考えると、私の店にとってありがたい酒屋さんは、皆都心から離れ、銘柄をある程度絞り込み、一つ一つの蔵とのお付き合いが濃密な酒屋さんのようです。例外もあるのですが、雑誌などのメディアによく取り上げられる酒屋さんで、有名銘柄はほとんど取り扱い、伺ってみると、素人から見ればあれもこれも皆そろっていて一見涎が出そうな、有名銘柄のデパートのような有名店はお付き合いが難しいのです。


従業員もたくさんいらっしゃるのですが、ご主人の意欲をそのまま感じ取てるような打てば響く担当者になかなか出会えない。


稀少酒は入荷しても、電話中心の地方の小さな料理店では回してもらえない。


どこかの巨大量販店みたいに「何でもあるけど、欲しいものは何にもない」


たとえば、よく話に出る「十四代」などは、東京の超有名店には置いてあっても、一般の方は抽選だったりしてこういう店で手に入れることは至難のワザですが、逆に地方の店で「十四代取扱店」にいくと簡単に手に入ることがあります。


奈良のお客様に伺った話ですが、一度飲んだことがある「十四代」の味が忘れられず、手に入りにくいことも知っていたので、近所の酒屋さんで「十四代に似た味のお酒がありますか?」と尋ねたところ、「似た味はないけど、十四代ならあるよ」ということで簡単に手に入ってしまった・・・と。


地方都市のとうちゃん・かあちゃんの小さな店で熱心な店は、勉強熱心で時代の先を見つめていらっしゃるのですが、地域がそれに気づいていないことも多いのです。確かな舌で選んだ驚くほど美味しいお酒を置いても、消費者は相変わらず「久保田 八海山」しか買っていかない。高価でも素晴らしいお酒を置いても、地方なるがゆえに売れない。そんな店こそねらい目です。


東京大阪の超有名店には、これから次の「十四代」「飛露喜」「王禄」をねらう蔵元も、扱って欲しいと売り込みます。当然そういう店には続々といい酒が集まるのですが、納入価格等は厳しいらしく、超有名酒店から離れつつある現象も出始めているようです。


ここでも、メディアが酒屋を持ち上げたばっかりに歪みが置き始めています。


もしかするとあなたのすぐ近所のその酒屋さんは、とんでもない掘り出し物を持っていらっしゃるかもしれません。