料理人の手間

clementia2002-03-08



写真の左側はこの方が作ったオニオン・ヌーボーです。


ピンポン玉よりちょっと小さいくらいの大きさのたまねぎの一種で、たまねぎの辛味や臭みが少ない上品な味わいです。


頭の中で思い浮かんだ献立を試作しようと、
「鈴木さんのオニオン・ヌーボー入ってたら、試作用にひとパックだけ頂戴」
「親方、ちょっとお待ちくださいね」
と、裏の仕事場で根を切り、薄皮と砂をタオルで拭いてパック詰してくれます。


「えっ、砂つきのほうがいいのに。そのまま頂戴」
「ですよねぇ。でも、掃除してからもってこいっていう親方がほとんどだもんだから」


調理人が手間を惜しんじゃいけません。
農家さんが丹精込めて作ってくれたものを、土を落として掃除するのは板前の仕事です。


そういえば、そろそろ出始めるウスイ豆なども、殻をとって袋詰で置いてあることが多かったのもこういう風潮のせいです。秋の銀杏なども殻をむいて売っています。


こういう品物は殻を取ったときから劣化が始まってしまいます。料理人が剥いて、即火を通すことで美味しくなるのに、人手がないことを理由に寝る間を惜しむことを私はしたくありません。


大きな厨房などでは、芋は皮を剥いて業者から入荷され、お刺身のツマの大根は刻まれできあがった状態で入ってくることがあります。大きな結婚式などで、きれいにできあがった剥きモノなどは、ほとんどが専門業者の手になるものです。


コスト、人件費の都合でそうなるしかないのでしょうが、当たり前にかけるべき手間は休憩時間を削ってでもかけるべきという姿勢は崩したくありません。お客様には見えないけれど、こういう積み重ね一つ一つが最後に味に繁栄されるを信じたいものです。


右側はフルーツトマトです。


最近では各種のフルーツトマトが出ていますが、この「やまちゃん」が作ったフルーツトマトは別格です。二年ぶりで一箱だけ手に入りました。


苺を濃縮したような味、「トマトは果物である」と確信してしまうようなパワフルな説得力を持っています。


作り人が少ない、量ができない、すぐに売れてしまう、で欲しい時に手に入るということはまずありません。今日の20個のトマトは早い者勝ちです。


私ン処で唯一このトマトだけは、剥いただけでお客様におだしします。