説明がない
遅まきながら、昨年の夏話題になった、教授(坂本龍一)の「カーサ」を聞き始めました。
ボサノバ創生の頃1950年代後半の、幾分スノッブでセンスのいい、ある意味上流社会のかっこよさを今再現するとこういう風に仕上がるのか、という雰囲気をもったクールな音楽です。
かっこいい
趣味がいい
気持ちいい
この素敵な音を「癒し系」とか「ヒーリング・ミュージック」とかでひとくくりにすんなよ、と言いたい。
ジョアン・ジルベルト、アントニオ・カルロス・ジョビン、ルイス・ボンファ、ナラ・レオンなどとともに私が一生聞きつづけるボサノバ・アルバムのひとつになると思います。
しかし、このアルバム対訳の歌詞カード以外はすべて英語。
MORELENBAUM/SAKAMOTO CASA
Recorded at
The house of Jobim
Mega Studio
Discover Studio
In
Rio de Janeiro,Brazil
This album is
dedicated to the spirit of
Tom Jobim
メンバーと曲目以外はこれしか書いてありません。
モレレンバウムという二人と坂本という人が作ったカーサという名前のアルバムで、録音はリオデジャネイロのジョビンさんの家と二つのスタジオ行なわれ、このアルバムはトム・ジョビンという人に捧げられたということだけが辞書を片手に読み解くことができます。
さらにアルバムの写真からジョビンさんの家(多分)というのはとても居心地のよさそうなお家で、なるほどこういうところでこそサロン・ミュージックであるボサノバが生まれるのであろうな、ということが推測できます。
世界に向けて発せられたワールド・ミュージックで、音そのものと写真の雰囲気だけで説得力があればそれでよいではないか・・・・・という明確なメッセージが見えます。
ボサノバをよく知らずに買った音楽ファンにはそれだけしか見えません。英語を読んでみようという意欲がなければ、坂本龍一が作ったボサノバであるということしかわかりません。
トム・ジョビンという人が「あの」アントニオ・カルロス・ジョビンのことで、坂本龍一がジョビンを深く敬愛していて、モレレンバウムさんというのは夫婦で、しかもジョビン晩年のグループのメンバーで、すべての曲は「イパネマの娘」や「波」ほどは有名ではないけど、ジョビンが創った名曲ばかりで、きっとジョビンのお家でその空気を吸って音つくりをしたってことがこのアルバムの凄く大事なことなんだろう・・・・というお話は説明されていません。
私のようなミーハー・ファンには、そういうまつわるお話がとってもありがたいのですが、音以上も以下もない、音だけが表現しているという潔い姿勢が凄いです。
料理の一皿そのものに説得力をもつっていうのといっしょです。説明講釈などいらん・・・ってことね。