包丁研ぎ


私たち料理人にとって、包丁を研いで切れるようにしておくのは、仕事を手早く綺麗に仕上げるためにもとても大事な作業ですので、ほぼ毎日二種類から三種類の砥石を使って研ぎます。


ご家庭の主婦にとってこの包丁研ぎはもっとも苦手な作業のひとつかもしれません。多分やる前から素人にはとても無理と思っていらっしゃるでしょう。


以前にアメリカでお世話になった女性は、「ナイフが切れなくなったらどうするの?」と聞くと、「捨てて新しいのを買うわ」と答えました。


昔のように研ぎ屋さんが街角で家庭の包丁を研ぐという姿をみることもなくなってしまった今、皆さんはどうしていらっしゃるのでしょう。


研ぐという作業も回数をある程度こなせば誰にでもできる仕事です。砥石も一般的な人工砥石であればそれほど高いものではありません。


砥石は研ぐ前に30分ほど水につけておきます。砥石の下にぼろきれなどを置いて滑らないようにします。


しっとりぬれた状態で、包丁の刃の部分をしっかりと砥石にあて、最初はゆっくりと砥石全体を使って上下に滑らせます。あまり力を入れ過ぎず、回数で切れ味を増させるくらいの心持がちょうどいいでしょう。


家庭用の包丁は両刃のことが多いですから、20回上下させたら裏返して同じ回数を上下させます。砥石が乾いたら水でぬらして滑りをよくしながら作業を続けます。


われわれは切れ味を指先で調べるのですが、大根や人参の切れ端を切ってみることで切れ味を試してみてください。


細かく言うと、刃先がカーブしている包丁は刃を上下する時に半円を描くように滑らせるとよいのですが、最初は普通に上下させるだけで十分です。


包丁が切れすぎると手まで切りそうで恐いという方がよくいますが、切れる包丁のほうが手を切る危険はずっと減ります。是非ご家庭でこまめに包丁を研いで見てください。案外簡単です。