妥協その二


前回の続き


店作りの妥協はお酒の品揃えにも反映されます。


まずは、お客様が注文してくださる値段のお酒をそろえなくてはなりません。昔のようにどこの日本料理店へ行っても、瓶ビールと熱燗とどこでも手に入る焼酎の組み合わせであれば、値段の開きに大きな違いはありませんでした。たった15年前のお話です。


ところが各種の吟醸酒やワインまでラインアップに載せなくてはならなくなると価格帯は様々です。


居酒屋さんであれば、日本酒の売れ筋は一升¥2000-¥4000(原価)クラス、ワインなら一本¥950-¥1500(原価)というところでしょうか。実際に酒屋さんを回るとこの辺の品揃えの豊富さはすごいモンです。


どんなに店主や調理長が美味しいお酒だと思っても、一皿の値段が¥1000以下の店に一升¥10000以上の日本酒や、一本¥10000以上のワインをズラリとそろえてもお客様は歯牙にもかけてくださらないでしょう。コスト・パーフォーマンスに優れたお酒を置くのは必須命題です。


わが身を振り返ってみると、この点でも私ン処は言いたい放題、わがまま放題で自己満足のお酒のラインアップ、申し訳ないほどです。


高価なお酒で稀少なお酒を置かせていただいているのはもちろん、お手頃価格の品揃えも優良な酒屋さんのおかげでとても恵まれています。


たとえば、日本酒。この時期のお手頃価格では、


田酒 山廃純米
飛露喜 特別純米
十四代 本丸および槽垂れ
群馬泉 初しぼり
菊姫 山廃純米無濾過生原酒


自画自賛してはいけませんが、綺麗に並んでいると思います。


ワインでもお手頃価格では


マコン ドメーニュ 1997 ヴァレット
マコン ビラージュ 1996 ドメーニュ ロアリー
ブルゴーニュ ルージュ1997 ドメーニュ アンヌ・グロ
ブルゴーニュ パストゥグラン1997 ドメーニュ エマニュエル・ルジェ


これも自画自賛してはいけませんが、チリワインがうまいとか、カリフォルニアも中々だとかいうお話とは別次元のラインアップに仕上がっていると思っています。「この値段帯で納得できないのなら、もうそれはご本人の舌の価値基準の問題である」と強気な発言さえしてしまいそうです。


もちろんこの辺から上のクラスのものはごまんと置いてはあるのですが、お手ごろな価格のところでも「この辺でしょうがないか」という妥協のないところで仕事をさせていただいているのは幸せです。


これも、容認してくださっているお客様に感謝。