妥協その三


さらに続き。


妥協のないところには職人的にはいい仕事が産まれます。原価を無視したり気にしない仕事には豪奢な世界があります。


ところが、そういう妥協のない職人には時に不遜も産まれます。


おれの仕事がわからないようなお客はダメだ、こんないい仕事をしてるのに全くわかっとらん、とでもいうような。


よくありそうな講釈いっぱいの、機嫌の悪い、頑固そうなラーメン屋のオヤジみたいな職人です。


私のもっとも忌み嫌うタイプ・・・・と思いながらも、「これだけの値段をとってこの程度か」とか「いっぱしの講釈をいいながら全然美味しくない」などとご批判をいただいたときの私は、すぐにこの不遜なタイプの職人になってしまいます。自分を戒めながらも、自分の気持ちへの妥協をしたくないという仕事への姿勢を持てば持つほど、お客様に対しては不遜になる可能性が増えてしまうのです。


いっぱしのことを言いながら、この程度の処でとどまってしまっている私には人のことをとやかく言う資格などまったくありません。全く冷や汗ものです。