桂剥き(かつらむき)


桂剥き、大根などを紙のように薄く剥いていくあれです。


日本料理店ではあの桂剥きができなければ通用しません。とはいっても、大きな店やチェーン店では「大根つま○○kg」という注文を専門店にするだけで、自分のところでは桂剥きなどしない店もたくさんありますし、あっという間に大量の桂剥きができる機械も比較的お手軽であります。


昔は渡り職人というのが実際にいたそうで、玄関先で「手前生国とはっしますところ・・・」とやっていたのを父などは小さい頃見た覚えがあるのというのですが、そういう職人の腕を見るのにも桂剥きをまずやらせたと聞きます。職人の包丁の技術を見るには手っ取り早いというわけです。


調理師学校にも桂剥き試験があるそうで、なま板の長さを途切れず剥けて、新聞がすかして読める薄さ、というのが合格基準なのだそうです。


私も修行に行く前に、毎日練習をしたのですがちっとも上手くならないで苦労したほうです。もともとが不器用ですから何度やってもブチブチ切れてしまってお話になりませんでした。それでもいざ修行に入ると毎日剥く大根の数が半端でないので、あっという間にものになったのでした。それでも同僚の中で進歩の具合はどん尻でしたが。


素人目には難しいと思う桂剥きもできてしまえば、ただの作業のひとつで、私ン処では若いものの仕事ではあるのですが、まだ薄さと速さでは負ける気がしません。というのも私ン処ではいわゆる大根つまというのをほとんど使わないからで、包丁修行という意味ではちょっとまずいかもしれません。


これができたからどうってことない技術でも、実際桂剥きが上手にできるようになると、不思議とほかの包丁使いも自然と向上していることが多いものなのです。ただし、厳しい修行の末に習得するというよりは、数さえこなせば誰でもできるようになる仕事のひとつではあります。桂剥きが上手いからいい職人・・・とは決していえません。