お酒は土地ではない


昨日、「お酒は新潟に限る」とおっしゃるお客様のことを書きました。


ほんの少し前まで、お酒は地方による特色がかなりあったそうです。


その土地で出来る米を使い、その土地の伏流水を使い、冬寒い気候だからこその寒造りでしたから、その土地の特性が出るのが当然です。


しかし、流通的にも工業的にも飛躍的発展を遂げた今では状況は違います。


米は全国から入手が可能です。温度管理は気候に関係なくできます。水は土地のものですが中には「醸し人九平次」のように水さえも別のところから名水を入手しようという蔵まであります。酵母については県の試験場独自の酵母によって「静岡酵母」「山形酵母」「金沢酵母」「アルプス酵母」と土地による特色があるのですが、バイオの時代に入ってそれさえもこの先の進歩は計り知れません。


ここまでくると、要は土地、地域性ではなくて蔵の個性だけが決め手であって、蔵元の志の高さと杜氏の技術と意欲が酒の味の80%を決定するのだと信じています。


ワインであれば、その味でシャトーやドメーニュまで当てるのは不可能としても、生産された地域を推測することは出来るかもしれませんが、日本酒の場合、味だけで地域を推測することはほぼ不可能です。


新潟だから美味しい、北国だから辛口であるというのは全く当たらない話で、暖かな土地柄、米の名産地でなくても「人」がいい酒を造るのです。


そういう意味でも、店で使わせていただいている日本酒の数々を造りだす人々を尊敬してやみません。