三切れと三点盛


皿の上に三枚、一種類の白身のお刺身がのっているお刺身と、三種類の魚のお刺身がのっているお刺身、どっちがいいか?


そりゃ、同じ質ならば三種類の方がいいに決まっています。


特にこの地では、「いい料理=豪華なお刺身」のような暗黙の了解があって、それを打ち破って満足していただくには相当な説得力が必要です。


一昨日のお刺身の内容、「一味鯛(福田)に塩昆布」のみ
昨日のお刺身の内容、「白川(舞阪)の昆布〆に塩昆布と煎り酒」のみ


原価だけで言えば、一味鯛、白川ともに一種類だけでも養殖鯛の4倍、天然平目最上物と同等の値段ですから、この一皿で居酒屋さんならひとりが飲み食いできるくらいのものです。


さらに、こういう職人にとってはたまらない魚の隣に並べるものは、半端な食材では気分が萎えてしまいます。太刀打ちできる魚の入荷がなければ、一種類で勝負したいと思ってしまいます。


養殖の鯛、冷凍の南鮪の中トロ、紋甲烏賊、海胆と並ぶ豪華に見えるお刺身と、前記の一種類のお刺身、あなたならどちらを取りますか?


京都「千花」さんでいただいた瀬戸内の鯛、別のときにでた瀬戸内の鱸、どちらも一種類だけでしたが、今でも味が思い起こされるほどの印象を心に刻み込んでくれほどのお刺身。


こういう力を身につけたいと思うのです。