名演その2


MILES DAVIS "MY FUNNY VALENTINE IN CONCERT"
(マイルス デイビス 「マイファニー ヴァレンタイン」)


多分、これまで30年近くの間で、一番繰り返し多く聞いたレコードです。


1964年2月 ニューヨークはリンカーンセンターでのライブ録音の内の一枚。


ジャズやクラシックのライブ録音では「神が舞い降りた瞬間」というのがあります。最高レベルの演奏家達に神々が啓示を与えたのではないかと思うほど、高揚した完成度の高い奇跡の演奏。


特に素晴らしいのがこのアルバムの中の"MY FUNNY VALENTINE"と"ALL OF YOU"です。


ベースのロン・カーターのバッキングはそれ自体が歌い、マイルス、ハンコックと調和し、刺戟し、挑発し、融合しています。その時代にはベースという楽器が、バックで低音を支えるだけではないという風に進歩し始めた頃ですが、それにしても、バッキングだけでころほど美しいラインというのは稀有の名演であります。


そして、ピアノのハービー・ハンコック。彼こそまさにこの時神様が乗り移ったその人です。(マイルスはすでに神様ですから言葉を尽くす必要はありません)


"MY FUNNY VALENTINE"のこれ以上はない美しいイントロダクションと緊張感ではちきれそうなマイルスとの掛け合い、ピアノソロ。白眉は"ALL OF YOU"のピアノソロです。ライブでこれほど構成力に優れ、完成されたピアノのソロはそう多くは存在しません。この数分間の演奏だけでハービー・ハンコックは後世に語り継がなければならないピアニストになったといっても大げさではないと私は思っています。


TAKEを重ね、譜面で書き写したとしてもこういうフレーズの積み重ねと、ベース、ドラムスとのインタープレーは出来ないものです。まさに神が宿ったとしか思えません。


即興を旨とするジャズの醍醐味そのものが味わえる瞬間です。


このアルバム、すべての人にお奨め・・・・ではありませんが、楽器を触っていたり、ジャズに興味がある方が未聴であれば必ず聞くべきです。


のけぞります。