綾菊


香川県綾上町の酒「綾菊」


1988年全国鑑評会出品酒 純米大吟醸 2月上槽後、斗瓶にて七年低温生熟成、その後さらに酒屋にて冷温六年熟成。


香川産オオセト 精米歩合33% 阿讃山系綾川伏流水地下水


つまりこういう事です。


1988年に「オオセト」という香川産の酒米を33%まで精米して、寒造りで造られた純米大吟醸を2月に搾り、一升瓶十本分の大きなビンに入れて、加熱処理しないまま冷たい温度のなかで七年間寝かせ出荷され、酒屋の冷蔵庫でさらに六年間寝かされていたお酒・・・・・なのです。


酒の色はホンの少々の黄色がかった透明色で、盃に注ぐ時若干のとろみを感じさせます。


香りにひね香がありますが、10数年を経たものとは思わせないフレッシュな香りは、冷温での熟成のためと思われます。


口に含むと、柔らかいふくよかさが口の中に広がり、次に味の厚みのなかに隠れた上品な酸味が現れます。酸味と同時に感じるやさしいひね香は、これまで経験のないほど品格があって、最初に味わったふくよかさを消すものではありません。というより、このひね香とふくよかさが酒の余韻となって長いアフターテイストを導き出しています。鼻腔から抜ける余韻はとてもバランスがよく、長い間眠っていたことで酒質の変化はまさに「熟成」の名前にふさわしいと断言できます。


何本もの古酒を味わった中で、生酒を熟成してこれほどバランスがよく、やさしいふくよかさにつつまれた日本酒は初めてです。久しぶりの突き動かされる感動です。


夏前に新たな世界を教えてくれた「達磨正宗昭和五十四年純米甘口果実香」に次いで、更なる驚きです。


生でこれほどの熟成が成立しているとは思いもよりませんでした。


ほぼ同じ頃仕込まれた菊姫菊理姫」平成元年記念古酒に比べても遜色ないどころか、別の世界を形成しています。


生酒の熟成は温度管理の面でもコスト、リスクの面でも蔵にとっては冒険ではあるでしょうが、日本酒の古酒の様々な思考錯誤のためには貴重な経験値を与えてくれると確信できる素晴らしいお酒です。


期待以上の出会いが嬉しい。