私がやる


調理場では修行と言う意味もありますので、何から何まですべて私がこなすわけではなくて、各所で若い者に指示をしてやらせる仕事がたくさんあります。


どの辺までを若い者が、どこから調理長自らがという区分は店の大きさによってずいぶんと違います。


一人仕事の職人さんはまさに何から何まですべてですし、大勢の調理場では調理長は献立を書くだけという場合もあります。


私ン処などは小さな小さな料理屋ですから味付や包丁で切るような重要なポイントはすべて私が関わっていても、細部の盛り付け、焼き物、揚げ物、魚の下処理など任せています。


が、たまに盛り付けなどに私が手を加えると、自慢するわけではないのですが、当たり前のように違ってきます。20数年のキャリアの違いがあるのですから。


やっぱり、本来任せておける性分ではないのです。


で、
実際、そういう仕事を一つ一つしているときが一番楽しいのです。


お客様の所へ伺ってお酒を選ばせていただいたり、お話をさせていただくのも嫌いではないのですが、生来の職人気質はやっぱり調理場の中が一番似合っているようです。


などといって何から何まで手を出していたら若い者が育ってきません。


早く育ってきて欲しいという思いと、もどかしさと、いつもその狭間の中でブチブチ、ブチブチ小言を言いながら仕事をしています。