十分飲めるワイン


モレ・サン・ドゥニ 1996 (ドメーニュ・ドゥージャック)を一本開けてみました。


何年か前に買ってセラーに寝かせてあるものなのですが、今の熟成具合を調べようとおもいました。


コルクをあけたと同時に一気に広がるブーケが素晴らしく、タンニンもだいぶこなれてきています。色はすでに熟成を感じさせる少しオレンジ色が見えるのですが、味的には熟成感はもうひとつ、若さに初々しさがあります。フィニッシュで感じる苦味が溶け込んできたらリストに載せる価値があると思うのですが、もうしばらくの熟成が必要だと思います。


ワイン好きの間で言われる「十分飲める」段階に到達していても、お足を頂戴する以上「飲める」ではなくて「美味しい」段階でなくてはいけません。


世界中のワインの90何パーセントは熟成を必要としない、即飲むワインだそうです。


ただ、私ン処に置いてあるワインのほとんどは熟成してナンボ、というものばかり。


ご自分で買って飲むのは「十分飲める」、つまりかなり若いけど我慢すれば飲める、もしくは美味しさを感じることができる、ワインで充分です。


そのほうが安く手に入りますし、実際一般の酒屋でいま熟成がピークを迎えているワインばかりをそろえてある店はほとんどありません。


例え手に入っても、ボルドーブルゴーニュのホントに熟成間があるワイン、10年以上を経て飲みごろを迎えたワインは、値段が倍以上になっているのが当たり前です。


でも、日本料理屋で飲んでいただくワイン、特に強いタンニンが日本料理の邪魔をするワインは基本的に出すべきではないと思います。


今のワインの造り、特に1990年代に入ってからの醸造法は革新的に進み、すぐ飲めるワインがとても増えてきました。だからと言って、熟成が否定されるわけではありません。熟成されたワインは間違いなくさらに美味しいはずです。何しろ1990年代のワインのホントの美味しさがわかってくるのは、まだもう何年か必要なのですから。(ブルゴーニュの1992年は飲みごろを迎え始めています)


「十分飲める」ワインをお安く提供するお店と、「熟成して美味しい」と思えるワインを出そうとする店のワインの値段が、少々違っても仕方ないのはおわかりいただけるとありがたいです。