日本酒と料理の相性


日本酒の種類が多様になり、香りも味も個性的なものが増えてきたのはこの10数年の事です。


ワインブームも手伝い、料理とお酒の相性という事も当然のように語られますし、ワインブームよりずっと前からこちらのように取り組んでいらっしゃる方もいます。


私ン処でもワインへの取り組みも長いせいで、日本酒と料理の相性も思考錯誤を繰り返しているのですが、相性だけでは語れない別の視点もあっては良いのではないかと思ってもいます。


言わば、日本酒を料理と同じようなコースの流れとして演出するという考え方です。


もちろん、相性も踏まえた上で。


日本酒はワインと違って、一組のお客様に一本を開けていただく必要がありません。


一つの料理に対して一口だって良い訳です。


ですから、料理が先付けから始まってデザートで終了するように、お酒も序破急ともいえる流れを持たせてお客様に少しづつ楽しんでいただく事が可能です。


そこで何より重要な事は、後戻りをしない事。


「前のお酒の方が美味いジャン」と思われてはいけません。


最終の頂点に向かって、階段を上るように美味しいお酒を組み立てていく事を心がけます。言わばドラマを作るように、出会いから次第に盛りあがり、裏切りじゃなくて意外な展開があって、フィナーレに向かってのぼりつめる・・・・・ちょっとオーバーですが。


同じ値段帯の同じクラスの味でもコースの組み合わせは可能ですが、お客様の満足度はお酒を次第に美味しくしていって、極めつけに到達したほうが喜びが大きいように経験的に思います。


例えばワインにしても、後半に行くにしたがってボディのある熟成した良いワインをお奨めするソムリエさんが多いはずです。


どれほど、料理との相性が良いからといって、Ch.ラトゥール’61の後にボージョレ・ヌーボーを用意するような愚は犯しません。ラトゥール’61の後にはワインは必要無いかもしれないのです。


日本酒でも一緒です。


お客様が「黒龍 石田屋」を飲みたいとおっしゃれば、石田屋の後に本醸造の熱燗を持ってくれば、不味い不味いと思って日本酒を飲んでしまうかもしれません。


当然、お客様には好みもあり、予算もあり、適度な飲める量もあり、お酒に対する理解の深さもあり、年齢による認識の違いもあります。


それらをトータルに考えた上で日本酒のコースを頭の中で組み立てます。


長くなりそうなので、明日もまた。