鯛めし


静岡駅の名物駅弁に「鯛めし」があります。


ちゃ飯(薄いお醤油味のご飯)に魚のおぼろを万遍なくのせてあるだけのご飯です。


長年変らない、お手ごろで美味しい駅弁として有名です。


鯛めしにはいくつかの手法があって、「与太呂」さんの鯛を丸ごとご飯と土鍋で炊くやり方、鯛を切り身にしてご飯と炊き込むやり方なども美味しいものです。


私ン処では、普段使っているお刺身用の白身魚の中落ちを使います。


何しろ、高価ながんばって買うお魚です。全て使いきってあげなくてはお天道様に申し訳ない。


以前、有名料亭で修行した板前が調理場にいたとき、「○○では魚を贅沢に使っていました」と言っていました。よく聞いてみると、高級な魚の良いところをお客様に使ってあとは大胆に捨てていたという意味での「贅沢」なのでした。


まっ、大都会では高いこと、高級なことが正しいことと思ってしまう方もいますから、それはそれで・・・・。


話がそれました。
お刺身に使った後のアラを熱湯に通してから茹でます。骨についた身を丁寧にせっせって、スピードカッターで細かくします。みりん、酒、塩、砂糖でちょっと甘めの味をつけて、湯煎にかけて気長に2〜3時間。ポロポロになったら出来上がりです。


ちゃ飯にかければ、私などお漬物だけで三杯はいけます。


魚を使いきることと、「贅沢」使うこと、考えてみれば、使いきるためには細かい作業をするために一番高価な人件費がかかるわけで、人件費を切り詰めて、「贅沢」といって捨てていたほうがもしかすると経済効果的にはいいのかもしれません。


それでも、骨についた美味しい身を捨ててしまうのは職人的には恥ずかしくてできません。