栄華盛衰


私ン処の町内は、乾物店、飲食店、ブティックが集まる場所です。


最近知り合いがブティックを始め、その隣にも洒落たガラス器屋さんが現れました。


また、そのすぐ前には新しくお鮨屋さんができるそうですし、100年も続いた料理屋さんが店をりっぱに新築します。


この一・二ヶ月の間に近所の3軒のブティックが店じまいをしたり、移転したりし、一軒のカフェが店じまいをしました。


長く続いた店もあり、最近始めたばかりの店もあります。


移り変わりの激しいこと、近年例のないほど厳しいものです。


出入りの食材屋さんの話では、もうニ・三軒危ない店があるかも知れない・・・・と。


皆さん意気に燃え、志を立てて店を開きます。


しかし、何が当たり、何が外れるか全く見当もつきません。


私自身、料理にしろ、酒にしろ、今の姿をお客様にいかに受けるか、儲けることができるかを考えて作り上げたわけではありません。


こういう料理がこれからのトレンドだとか、集客効果を得るためにはメニュー作りはこうで、酒の品揃えはこうあるべきである。お客様の動向と心理を読み、東京での傾向を探りながら地方性も踏まえたうえで・・・・みたいな会議をしたら、私ン処のような形態には絶対にならないはずです。


自分が食べてきて、飲んでみて「美味いなァ」「こういうのをやってみたいなぁ」だけで成り立っていると言ってもいいでしょう。


たまたま、お客様がそれを面白がってくださっているだけなのかもしれません。


お客様の受け狙いをして当たった試しなど一度もありません。


そういう才能に恵まれていたら、店をもっと大きくして儲けることができるのでしょう。


そういうのを甲斐性と言うのでしょうが、私にあるのは「これ美味いなぁ・・・」という自身のない感性だけです。


今の厳しい時代、そんなんで荒波を乗り切っていけるのか?


これしかないのですから仕方ありません。