前菜 お椀


前菜
  アン肝ゼラ寄(あんきもぜらよせ)
  鮑雲丹焼き(あわびうにやき)
  海老黄身寿司(えびきみずし)
  牛タンの味噌漬け


お椀
  牡蠣飛竜頭(かきひりゅうず)
  胡麻豆腐(ごまどうふ)
  新筍(しんたけのこ)
    鶯菜(うぐいすな) 柚子(ゆず)
    霙仕立て(みぞれじたて)


今日の献立の最初の部分です。


普段から使っている言葉なので、当たり前だと思っていると、実は一般の方には読みにくい文字ばかりであると指摘されました。


献立の内容もわかったような、わからないような・・・・


で、説明をしてみましょう。


"あん肝ゼラ寄せ”
 アンコウの肝を3-4cmに切り、血合い、筋を取り除いて水にさらします。 熱湯に入れて茹でること10分、さらにみりん、酒、薄口醤油の汁で30分煮て、ゆっくり冷まします。 一口大に切って、流しかんに並べ、吸い物の味をつけた出し汁にゼラチンを入れて固めます。


”鮑雲丹焼き”
 鮑はよく汚れを落とし、蒸すこと三時間。 生うにに塩をあて、30分なじませた後、蒸すこと10分。 雲丹は裏漉しして、卵の黄身、薄口醤油、酒で味をつけます。 鮑をスライスして串を打ち、酒と薄口醤油のたれをつけて焼き、雲丹をのせて乾かすように焼 きます。


”海老黄身寿司”
 活かしの巻き海老に串を打って真っ直ぐに伸ばして塩茹でします。腹側から半分に割っておきます。山芋をスライスして蒸して裏漉ししたもの、ゆで卵の黄身を合わせ、酢、砂糖、塩などで味をつけそれを芯にして巻きすで巻きます。


”牛タンの味噌漬け”
 牛タンを香草と共に二時間茹でます。皮を剥いて熟成させた仙台味噌に漬けこむこと3〜4日でできあがります。


以上が前菜です。


”牡蠣飛竜頭”
 牡蠣の汚れを落とし、ひたひたの酒で10分蒸します。ワタの部分だけを裏漉しします。一昼夜重石をして水気を切った木綿豆腐を裏漉しして、牡蠣の裏漉し、山芋、塩、薄口で混ぜ合わせます。玉に取りながら油で揚げ、盛る直前に出汁煮こみします。


胡麻豆腐”
 剥き胡麻をフライパンで乾煎りし、香りを出します。擂り粉木で油が出るまでしっかりすりつぶします。前日から水に浸しておいた昆布だしに本葛を入れ、胡麻をのばしていきます。裏漉しをして鍋で練っていくこと40〜60分、缶に流して出来上がり、盛る前に蒸して温めます。


”新筍”
 地物の新筍を糠、たかの爪入れた水で茹でること一時間半、自然に完全にさめてから、もう一度茹でて、糠ぬきします。一口大に切って、二番だし、昆布蓋、追い鰹節を入れて30分茹で塩と薄口醤油、酒を入れて味をつけ、さらに15分、ゆっくり冷まして出来上がりです。


”鶯菜”
 茹でた鶯菜を出し汁に漬けておきます。


以上を温め、吸い物の味をつけた出汁に大根卸しをいれ、大根が沈まないように薄い葛仕立てにします。温めたお椀の盛って、へいだ柚子をもり出来上がりです。


全部の品が食べれば一口、これだけ食べるのに早い人なら5分とかかりませんが、手間はこういう風にかけます。


時間をかけたものだけが美味しくなるわけでもないし、素材の素性が正しく無ければ、やっぱり手間をかけても美味しくない。味付けの時点でも、下準備の時点でも、手間を惜しめば、絶対美味しくありません。


お話に夢中であれば、美味しさは二の次になるし、お酒のほうに神経が偏る方もいる。


これらの手間をお客様に説明するのは単なる野暮になる。(今してるけど)


それでも、10人に一人位でも美味しいと思ってくださる方がいれば、すべての手間は喜びに変ります。


急に来店されて「美味しいもの頂戴」では出せないのがわかっていただけるでしょうか。