聖護院
京都のお野菜というのは本当に美味しい。
賀茂茄子、壬生菜、水菜、堀川牛蒡、京人参。
聖護院蕪は赤ちゃんの頭ほどもある大きな蕪で、身の詰まり方が普通の蕪とまるで違います。
今月の献立では蕪蒸しにしています。聖護院蕪をすりおろして卵白と少々のお塩を混ぜ、江戸前の穴子の白焼き、巻き海老、キノコにかぶせて蒸しあげて、少々濃い目の餡をトロリとはります。
冬の定番料理ですから、いろいろな店で召し上がることがあると思いますが、冬に温かさを感じていただくために私ン処ではお椀代わりにお出しています。
地物の普通の蕪を使うのと聖護院蕪を使うのでは、違う料理ではないかと思うほど蕪のしっかりさが違ってきます。この蕪だからこそ作りたい一品だと思っています。
一方、聖護院大根は今年になって初めて美味さを実感しています。
以前に使ったことのある品物より、ずっと素性の良いもののような気がします。包丁をすっといれるとピキッと割れるほどパンパンに水気を含んだ真ん丸の大根です。
こちらは、地鶏と一緒に水炊きに。
鶏がらとモミジ(鳥の足の部分)で半日ほどかけてじっくり濃厚なスープを取り、一時間ほどかけて下煮した聖護院大根とぶつ切りの地鶏をコトコトと煮こむことさらに一時間、酒と塩だけのシンプルな味で召し上がっていただきます。
料理というのは時間をかければかけるだけ美味しくなるというわけではありませんが、必要な手間を惜しんでは真っ当な料理には絶対になりません。
両方とも素材あっての単純な料理ですが、滋味というのがぴったりの味だと思います。