家庭料理

悲しいことに、日本の家庭料理から、伝統料理とか地方料理といった類のものは消えてしまいつつあります。


流通が革命的に進化し、冷凍技術、レトルト技術が進歩したことで、その地方でしか取れない素材や、その地方だけで伝えられつづけた料理が途絶えてしまう危険があります。


私が20代の頃、長浜の友人宅に行けば、おばあちゃんが鴨鍋で持て成してくれ、正月のお重に入っていた鮒寿司も自家製、その他の御節料理ももすべてお手製が当たり前でした。


山形の友人宅では、棒だらを炊いたのが大皿に盛られ、ズンダ餅、野菜の煮物と太巻き寿司が大変なご馳走でありました。


法事では近所の主婦が集まって料理を作り、それが特別な日を演出したものです。


今では外食がご馳走で、毎日でもパスタが家庭で食べられ、母の味はハンバーグであり、カレーだといわれるようになりました。


お客様だからといって、寿司を取るのではなく、野菜の煮物と自家製のぬかづけ塩漬け、当座煮が大皿に盛られ、「まあ、ちょっとつまんでいってください」というのもいいのではないか、というより、それこそがいいのではないかと思うのです。


受け継がれてこそ食文化です。