辛口信奉

長い日本酒の歴史の中で、辛口信奉が生まれたのはやっとこの2〜30年ほどのことです。


淡麗な辛口というのは確かにわかりやすいですし、一種類だけで食事の初めから最後まで通すには料理を殺さない最適なお酒です。


が、
もう日本酒を甘い、辛いだけで判断する時代ではないと思っています。


初めに口に広がるふくよかさだとか、広がる香りが鼻孔に抜けていく感覚だとか、喉ごしのさわやかさだとか、後味としての余韻だとか、という微妙なニュアンスは「甘い!!」の一言で日本酒を否定的に見てしまう方には一生見えない醍醐味です。


この「甘い!!」という言葉を日本酒の否定的な意味で発する方の中には、「俺ってハードボイルドだぜ」「日本酒は人並み以上に飲み込んでるぜ」と言いたいのが見え見えの方がいます。


こういうときは、「松の司は・・・」とか「十四代は・・・」といって始まりません。


一時期、あまりに「辛いお酒」の注文が多かったときには、日本酒度+20という超辛口をおいて対処したりしましたが、どうみても辛いだけのお酒でちっともうま味が感じられませんでした。(辛口信奉の方は満足していましたが)


で、
新潟系の〆張鶴、八海山、鄙願などで満足をいただくようにしています。


しかし、それでも「甘い!!」って・・・・


そういうときには「申し訳ありません。お客さまのマショクにあうお酒はありません」とすごすご引き下がることにしています。


ホントは塩まいて「とっとと帰れ!」って言いたくなちゃうけど。


蔵元、杜氏さんに申し訳ないですよね。