伊勢エビののう丸


台風と大雨のおかげで魚が手に入りません。


椀物に使っている鱚は、お刺身にできる鮮度の物でなくてはならないのに、この二三日の入荷はほぼゼロ。


変わりに安めで手には入った伊勢エビを使うことにしました。


伊勢エビののう丸。


伊勢エビを上身にして(身と殻を外し)、身を一口大に、殻は昆布と共に煮詰めて濃厚なスープを取ります。頭にある脳味噌は酒煎りして裏ごしします。


ハモのすり身を卵白と山芋、伊勢エビのスープに浮き粉を混ぜた物でのばし柔らかくします。


のばしたすり身、一口大にした伊勢エビ、脳味噌の裏ごしを混ぜ合わせて、殻で取ったスープでゆっくり茹でます。


出来上がりは、ただの「海老入りはんぺん」のような物なのですが、伊勢エビの濃厚さをすべて詰め込んだような献立です。


説明しないとほとんどわからないのがいつもながらの私の料理なのですが、伊勢エビが、これ見よがしでないのも、奥ゆかしくっていいですね。(自分で奥ゆかしいっていわないと誰もいってくれない)


奥ゆかしいだけでは献立にならないのですが、ざっくりしていて手が掛かっている仕事は残さなくてはいけないものです。