塩昆布/ピエール・エルメ


一つの技術で商売をしている方々の仕事は奥深いものです。


たとえば「そば」「鰻」などは代表格。


佃煮屋さんもその一つだと思います。


私ン処で使っている塩昆布などは、素材を手に入れることも作ることも私には全く無理です。


お得意さまにはお馴染みのこの塩昆布は、平目や鯛などの白身のお刺身に醤油代わりとして使ったり、お茶漬けにしたり、お客さまにも存在感抜群です。


出合ったのは5年ほど前、知り合いに「美味しいから」と教えられ、それからというもの桑名にあるこの佃煮屋さんの物以外は使わなくなってしまいました。


電話をすると、いつも「かくしゃく」と言う言葉がそのままのおばあちゃんがでられ、注文を聞いてくれます。家族だけで営まれるその店に、おばあちゃんがドカッといるだけで、高いレベルの味が変わりないことを伝えているような気がします。


キロ単価が上級クラスのサーロイン以上のその塩昆布は、それだけで日本酒のつまみにピッタリです。


ただし、カウンター席で「塩昆布と冷酒だけでイイや」っていう注文は勘弁してください。商売としてはおいしいかもしれませんが。


シャーベットの新しいレシピを探していて見つけたピエール・エルメ


名高いパティシエですから名前は知ってはいたのですが、そのレシピはこれまで見たどんなものより斬新で革新的です。ただのシャーベットにここまでオリジナリティーと高い完成度を盛り込めるものかと殆どショック状態です。


今の私ン処の献立、マスクメロンのシャーベット バニュルスのソースも悪くはないと思っているのですが、エルメのシャーベットの数々はまったく違うステージにあります。


しばらく勉強して、自分のものになってさらに献立に上るには時間がかかりそうです。


それにしてもフランスには天才が存在します。


和食の職人が果物切っただけのデザートを平気でやっている時代は10年前に終わっています。和菓子の職人さんもあんこにこだわるだけでは、伝統とか老舗とか言われるだけの遺物になってしまわないかと、ちょっと心配です。


苺大福みたいなものからぬけだし、さらに洗礼されるには天才の出現と時間が必要なのかもしれません。


和菓子にはそういう革新は必要ないとおっしゃる方もいるとは思うのですが。