甘鯛と鯖


旬こそ日本料理の醍醐味。


といったって
フレンチでもイタリアンでもいい店は旬の素材しか使いません。


甘鯛の時期は一般的に冬から初春にかけて、鯖は秋も深まった頃から冬にかけてと言われています。


ところが、
この地では、今が甘鯛の一番いい季節です。もう梅雨を迎えようとしているのに。


関西の方が聞いたら「梅雨時にグジ(甘鯛)?旬を知らんやっちゃ」と怒られてしまうでしょう。


関西で人気の若狭の甘鯛は、確かに寒い頃かもしれませんが、この近辺の遠州灘、舞阪港、福田港、三河などに水揚げされる甘鯛はこの時期から身が肥え、鮮度の点でも抜群のものが入ります。お刺身として昆布〆に良し、焼いて良し、蒸して良し、魚屋で目につけば必ず手に入れたい魚です。ただし、いいものは一日に数本、時に1〜2本です。


定番とされる旬よりも大事なのは魚の目利きです。


甘鯛がそうであるように平目にしても冬だけでなく、夏に小振りで身が飴色に輝くおいしいものに出会うことがあります。


昨日も「えっ?この時期に鯖?」と不思議なくらいいい鯖が手に入りました。


季節や旬だけにとらわれず、信頼のおける魚屋の目利きと料理屋の見識がうまい魚を見つけます。


昨日のお造りは甘鯛の昆布〆、あいなめ焼き霜造り、〆鯖。
冬と春と秋が一緒になっています。


訳知りのグルメが献立だけ見たら、こんなお造りの内容の店には来ないかも?


でもうまいんだな、これが。