天麩羅


天麩羅がコースの献立の一品に組み入れられることはあまりありません。


先付けとしてビールに合わせて山菜をあげたり、今の季節の桜海老駿河湾産)をかき揚げにするくらいでしょうか。


天麩羅は専門店で食べるのが一番美味しいですから。


目の前で揚げてもらって、即食べる。これ以上の食べ方はありません。


近隣にも3軒ほどの天麩羅屋さんがあります。


私自身は贔屓というほどのお得意ではありませんが、力があるなと思う一軒は、まだ30代にはいったばかりの若いご主人が揚場に立っています。お父様が築いたお鮨屋の名店を、もったいないと思うほど若くして閉め、ご子息が天麩羅屋として新たに出発しています。といってももう6〜7年。


一方、70歳を越えたご主人が揚場に立つ一軒は往年の名店です。この年でいまだにご自身が天麩羅を揚げ、店を切り盛りするのは驚異的としか言いようがありません。お客さまの評判も「昔の〇〇はよかった」ではなくて今も「天麩羅はやっぱり〇〇だよね」なのです。大病から不死鳥のように復活されたことも含めて、畏敬の念をもって賞賛されるべき職人さんです。


と、充分尊敬しているのですが、
が、
が、
頻繁に伺いたいかというと、


やっぱり一昔前の仕事のような気がします。


前述の若い方の店に伺いたくなります。


仕事に気合いが感じられ、食材の選び方にも妥協がない、店の手入れにも隙がなくて教えられることが多い店です。若さの勢いなのでしょうか。


この商売をしていますと、料理店の評判は耳に入りやすいものですが、この天麩羅屋さん、なかなかブレイクしない。そこそこの評価は聞いても私思うほどのものではありません。もっともっと噂になっていいと思うの実力だと思うのですが、軍配は「往年の名店」にあがりがちになる・・・・


なぜ?なぜ??


お客さまの舌って難しい。


ほんと難しい。