危うし 山田錦


親しい酒屋さんからうかがった話。


酒米といえば代表選手の山田錦。兵庫産のそれは全国の酒蔵が競って手に入れようとします。


が、
生産農家も減る一方、平均年齢も当然高くなってきています。


生産量が増えなくて需要が増えれば単価が高くなるのは当たり前です。


で、
心ある蔵元が集まり、作り手がなくなった田圃を買い取って、米作りを始めようとする試みがすでに始まっています。


蔵での酒造りが終わって農作業をし、出来たお米で酒を造る。


これが同一地で出来れば、ほとんどフランスブルゴーニュのワイン作りと規模も造りも同じではありませんか。


さらに、商社がすでに取り組んでいる「オーストラリアでの山田錦生産」も注目に値します。


土地代はただのような彼の地。原価は日本の何分の一。栽培も有機のようですし、なにより季節が日本と反対ですから今まで酒造りをしなかった時期に対応できます。


精米をして輸送すれば玄米より軽くなり、収穫してからおこなう「からし」の課程が船内でちょうど終わる、というわけで理論的には良いことづくめです。


ただ、米も酒も生産者の技量と意欲です。これからクリアされるべき問題がたくさんあるにせよ、兵庫産に勝り単価も遙かに安い山田錦が日本に上陸する日が来ないとはいえません。


一方で、喜久酔の松下米(山田錦)を藤枝でつくる松下利明さんというすぐれた農家がいたり、秋鹿(大阪 能瀬)では、山の盆地という山田錦にもってこいの場所を使って、蔵が米を作り、「一貫造り」というレベルの高い大吟醸をすでに世に出していたり、危機意識以前に高い志を持った作り手が存在しています。


こういう意識の高い蔵や農家がいる限り日本酒も廃れはしない・・・・と思いたいものです。