お運び


お座敷でのお料理のお運びは基本的に女性がします。


が、
調理場の若い者もお運びができるように指導しています。


何も知らずに調理師学校からこの世界に入ってきた若者には、できあがった料理をお客さまの目の前に置くという作業でさえ難しいものです。


外食に出かけたとき経験された方も多いと思うのですが、


テーブルに料理がいっぱい並んでいるとき、お客さまがスペースを空けてくれるまで料理を持ったまま待っているサービス。


食べかけの品物があってもさっさと下げてしまうサービス。


お座敷でも常に立ったまま料理を差し出すサービス。


料理を出すとき、お客さまの体に触れてしまうことを何とも思わないサービス。


大事な話をしているのに無理矢理料理の説明をするサービス。


値段が値段だからしょうがないか、サービス料は払っていないからしょうがないかと「ムッ」する気持ちを抑えている方は少なくないのではないでしょうか。


が、これらのことを店がクリアするためにはお金がかからないのです。


高価な素材を買うわけでも、設備投資をするわけでもありません。


気遣いをもって注意すれば良いのです。


できあがった料理をどのお客さまから出し始めるか。


お皿の位置はどこへ置くべきか。


襖の開け閉てはどのようにするか。


お辞儀はどのようにするのか。


次の料理ができあがったとき、前の料理が少々でも残っていたらどうするべきか、どの辺に置くべきか。


お酒の間合いと次の飲み物のことをどなたに聞くべきか。


などなどなど、突き詰めていくとキリがりません。詰まるところ、お客さまの心情をくみ取る能力と気遣いがすべてなのですが、それらのすべてがさりげなく、押しつけがましくなく自然な立ち振る舞いとなることが大事です。


まずは料理をお出しして、食べ終わったらお下げするという基本的なことを教えます。


ただこれだけなんですが、奥が深いんだこれが。