菊姫大吟醸


転機となったのは15年ほど前
定期的に読んでいた「四季の味」の連載に新潟「ほしの」のご主人のエッセイがありました。そこでしばしば登場してきたのが「菊姫大吟醸


菊姫というのがどれほど力のある蔵か、その大吟醸がどんなに素晴らしいお酒かが何度も書かれていました。


世の中、酒といえば熱燗が当たり前、冷や酒など料理屋が出す酒ではないという時代でした。それでもやっと地酒ブームもあり、生酒、貯蔵酒など冷酒も(冷やではありません)公認され始めていた頃です。吟醸酒もぼつぼつ紹介されていました。


菊姫大吟醸、そんなにうまいものか・・・といっても簡単に手には入るものではない。
と思ったら、同じ市内の熱心な酒屋が扱っていました。


ある蔵元にうかがったとき槽口(ふなくち)を飲ませてもらっただけで「リンゴの香りがする!!」と驚愕していた頃ですから、この菊姫大吟醸のおいしさは驚天動地。


すごい!!!


驚きでした。


店に置きたくても普通酒が高くても1500円程度の頃ですから、1本一万円のお酒を父が簡単に置かせてくれるはずもありません。
「そんな高い酒が売れるわけはない」
「酒なんて一種類あれば十分だ」
「だれが、管理をするんだ」


説得を重ね、やっと吟醸酒としてラインアップが組めたときはこんなでした。


〆張鶴吟撰
鄙願
久保田万寿
菊姫大吟醸


この4種類。
万寿も幻といわれた頃ですし、酒といえば新潟が当たり前でした。
この4種類で天下を取ったと思うほど強力ラインアップだと思っていました。


たった15年ほど前でこんな程度だったのです。


他の有名処も試飲を重ねてみたものの当時の菊姫大吟醸、万寿のおいしさは突出していて数年はこのラインアップを変える気持ちも起こらなかったのでした。


今の日本酒の状況を考えると、まぼろしのような話です。


昨日、お付き合いのある酒屋さんの紹介で見えたお客様の飲んだお酒


綿屋大吟醸斗瓶
十四代 龍泉
田酒 純米大吟醸斗瓶
開運 波瀬正吉1990
開運 弥市二昔(常温25年古酒)
天狗舞 中三郎
澤屋まつもと 鑑評会金賞酒平成9年
菊の城 秘蔵11年
黒龍 石田屋
酒一筋 赤磐雄町


時代の流れとはいえ、たった15年でここまで飲むお客様が見え始めています。


日本酒はまさに群雄割拠の時代。
時代に取り残されないように、というより時代に弄ばれないように地に足を着けて、納得できる日本酒を選んでいきたいものです。


ウロウロしてると料理が取り残されてしまいます。