ひと味濃い


関西風が薄い味で関東風が濃い味?
というのは私たちのような料理店ベースのお話としてはすでに迷信になりつつあります。
味付けの濃い薄いは料理人のセンスひとつ
西と東の違いではないような気がします。
薄い味が上品で、濃い味が下品というのもナンセンスです。
私など必ずしもあるかなきかの薄い味や
ものの味を殺さないというお題目のもとでの
ほとんど味のしない料理は作りたくありません。


たとえば今の献立の「鯛蕪」を例にすれば
出汁、酒、薄口醤油、塩の薄味でも良いのですが
味醂を加えることで甘みがあってこそ蕪の持ち味を生かすと思っています。
薄味命、甘みは悪と思われる方には
濃い味、甘い味にうつるかもしれません。

しっかりした味わいのよさももっと見直されるべきです。


たとえば、吉兆さん。高麗橋も嵐山もあるかなきかの味わいではなく
しっかりした味わいです。
(嵐山の椀のアタリは淡いものでしたが、高麗橋と比べてどうこうという比較ではありません)
たとえば、先日も伺ったタイユバンロブション。
ワインのことも考慮してホントに一皿一皿しっかりした味です。
たとえば香港福臨門酒家。
フカヒレも巨大な鮑もきちっとした味が付いていて初めておいしく感じます。


それにしても昨日の某中華料理店は濃い味でした。
ひと味、いやふた味濃い(からい)
ホテルの中華としてはとてもいい店ですし、料理長も尊敬すべきすぐれた方で
年に何回となく利用します。
昼食にちょっと麺でもと思って伺ったのですが、
これは調理長もしくは2番クラスの味付けではないのかもーーー?


このこと一つ取ってこの店がイヤになることは決してありません。
かえって同じ職業に携わる身として
店の味のレベルを安定させることの難しさを痛感しまいました。
他人事ではありません
すべてのお客様に安定した味わいを提供することこそ
一発うまいもの作ることよりも大事です。
どんな大規模な店でも私ン処のような小さな店でも。