殺し時


「生け簀」とか「水槽」を持って
活け魚料理を売りにする店はたくさんあります。


たとえばお客さまに選んでいただいたり、
締めたばかりの魚を目の前でお造りにして召し上がってもらう。
ってな具合でしょうか。


活きてる=新鮮=おいしい
の図式は未だ健在です。


が、
私ン処では、そんなことは考えていません。


特に水槽からすくい上げて、締めたばかりの鯛や平目を
お刺身で召し上がっていただくことはまずありません。


お刺身に一番良く登場すると言えば、平目、鯛、鱸でしょうか。


理想的な冬の平目と言えば2kg位。
この辺の近海のものでしたら10〜12時間前に締めます。


春と秋の鯛でしたら2〜2.5kg
8〜10時間前に締めます。
夏の鱸も同じくらいでしょうか。


つまり、お客さまが召し上がる時間から逆算して締めることが大変大事なのです。


締め時は魚によって産地によって微妙に違うのですが、
そこん処は経験による微妙な案配。


締めたばかりの鯛、平目、鱸はただ弾力があるだけ。
いわゆるうまみが出てきません。
時間とともに熟成することで味が出てきておいしくなります。


私ン処にも水槽はあります。
ただ、お客さまには絶対に見えないところに隠されています。
水槽は締め時を見計らうために使うのですから、
その日に使う魚だけが入っていればいいわけです。
で、
お客さまが来店されたときには水槽は空。
魚の下準備は全部できているのが理想的です。


新鮮さを強調するかのように氷の上に魚が並んでいたり、水槽を見せたりは
「おいしさのための下準備をきちっとしてない」
という証ともいえるかもしれません。


刺身の場合
身が活きている、と熟成している、の狭間に一番のうまさが存在してます。


まだ、召し上がったことがない方、是非一度お味わいください。
ゴムみたいな養殖の鯛のお刺身じゃないうまさなんですから。