注目株


料理研究家 フードコーディネーターという職業が
「スター」となっていることをご存じの方も多いと思います。


栗原はるみ 藤野真紀子 有元葉子
料理を研究してTVや本を出すことでスターになったと言うよりは
彼女たちのライフスタイルそのものが女性のあこがれになることで
スター像ができあがったようです。


こんなエプロンをして、器は自分で選んだこんなざっくりしたもの
庭にはハーブを植えて料理に一枚ちぎり、テーブルコーディネートはこんな風に
etc.etc.etc.


料理ももちろんよく考えられた内容なのですが、
見ている人が「美味しそう」だけでなくて
「あんな風に生活するのがステキ」と思わせることに
マーケティイングが存在するわけです。


銀座三越の1F、最上の場所で「有元葉子フェア」をやっていて
20〜50代の女性でごった返していたのもつい最近のことです。


このことは板前としての私にとっては、現象としておもしろくても
料理そのものはあまり興味のわくものではありません。


上野万梨子と言う例外を除いては。


彼女の出版した「魅惑のレシピ ディナー」「同  デザート」「BLT」
などは、料理本としてもエポックメイキングなものでしたが、
料理の内容はさらにすばらしく、
世のフレンチレストランもこれをそのままなぞるだけでちったぁましな、いや失礼。嘘です。
「BLT」はライフスタイルを売りにするブームのきっかけを与えた内容だったと思われます。


と言うわけで、上野万梨子には常に注目してきたわけですが、
新たな注目株が現れました。


長尾智子です。
「おいしい時間のつくりかた」「ニュー スタンダード ディッシュ」
「もっと知りたいイタリアの味」
などの料理本以外でも、雑誌で「おっ、これは」
と思わせる企画は長尾智子だったりすることが度々ありました。
ライフスタイルの提案としての料理と言う側面を持ちながら
前記の料理研究家と違い、「ステキ!」と思わせると言うより
「これは心地よさそうだぞ」という目の前のきっかけを作ってくれそうな内容ばかりです。
高橋みどりという良きコーディネーターとのコンビは
これからさらに飛躍していくことになるはずです。


板前としての私にとっては、この料理を献立の一つに
とは思わないのですが、
創造のためのインスピレーションは大いにいただいているのです。
こういう第三世代とでもいえる料理研究家が出てきたことはワクワクします。


日本料理は何してるんだろ。