日本のビール


本来ビールというのは麦芽とホップだけで出来ている飲み物というのはご存じでしょうか。


が、
ちょっと待って、今あなたの飲んでいるビールもしくは、発泡酒のラベル 原材料のところには米とかコーンスターチなどという言葉も並んでいませんか?


さらに言えば第三のビール(たぶん今飲んでいるのが発泡酒第三のビールかをハッキリ認識している方もすくないかも)ではエンドウとか大豆の文字はあっても肝心の麦芽が書いてないのでは?


日本で消費されるビールとそれに類するものの大多数は、麦芽とホップだけで作られたのではない飲み物なのです。


日本酒に比べると日本のビールの歴史や製造過程の知識はお寒いばかりの私の言ですので、片耳をふさいで聞いていただきたいのですが、ヨーロッパなどではビール ワインの製造法に関する法律はきちんと出来ている国が多いのに、日本には酒税に関わる法律はがんじがらめと言っていいほどガチガチでも、製造方法に関する法律は存在しないらしいのです。ですから、美味しさを決めるための原材料や製造方法は野放図でなんでもありなんですね。


この10-20年くらい横行する日本酒の純米信奉者たちが、「日本酒に混ぜモンなんてあり得ない」「大手は消費者をだましてアルコールで増量した日本酒を造り続けている」「昔の純米酒はよかった。アルコール添加は儲け主義に由来する」と声高々に言いますが、同じトーンで「ビールは麦芽とホップだけであるべきだ」「日本のビール会社は嘘つきだ」と言っているでしょうか。 少なくとも日本酒では「純米でなくちゃだめ」というお客様はたくさんいても「麦芽とホップだけのビールを」と注文した方は皆無です。料理人 もしかしたらソムリエでもラベル表示をみずにどのビールが麦芽とホップだけかを知っている方は少ないはず。





以前にも何度も語りましたが、日本酒のアルコール添加は戦争と戦後の厳しい時代の歴史を踏まえた上で考えるべきで、大手が儲け主義のために編み出した製造法という単純なものではないのです。


同じように、ちょっと前まで日本には純粋に麦芽とホップだけで作られたビールはほとんどありませんでした。今でこそ麦100%をうたい文句にするビールが増えましたが、それ自体がうたい文句になるということ自体、そうでないビールが未だに多いという事実の裏付けでもあります。


さらに言えば、麦芽の量で税金が決まってしまう(しかも純粋なビールは四割近くが税金)ことへの苦肉の策から生まれた麦芽を減らしてビールらしい味を目指した発泡酒の隆盛、そして、苦みが苦手な若者層への配慮から始まった第三のビール発泡酒の税金が上がったことで第三のビールは消費者の税金負担減のためにもなるのですが)の誕生。まさに庶民の厳しい経済情勢を踏まえて現れ、イタチごっこのように国税が税金をかけていく仕組みを、今しっかりと見つめて欲しいのです。


麦芽とホップに米やコーンスターチを加える手法(それ自体は昔から続いていますが)や麦芽を減らしてもビールの味わいを突き詰めようとしたり、麦芽以外でビールの味わいを再現しようとするビール会社たちは、原材料のコストのためだけに試行錯誤を繰り返すと言うだけでなく、経済情勢と税金との戦いの手法として様々な原材料 製造法を編み出しているという側面もあるのです。生き残るために何をしているのか、生き残るのが大変な時代であることもビールの製法原料にも関わります。


それらを考えれば、「日本酒でアル添けしからん」と歴史を知らずにのたまう方々も、今現実に目の前にあるビールの情勢を冷静に判断すれば「麦芽のホップだけのはずなのにけしからん」とはいえないと思うのです。


もし、もしも重いビールへの税金がなくなり、ビールの原材料と製造法に関する法律が完備し、大手ビール会社が技術の粋(発泡酒第三のビールを作ってしまうような)を集めて「美味しさだけを求めるビール」を各社が作れば、世界に冠たるビール王国になれるはずなのです。多くの優れた人材、技術が「美味しさのため」に使われていない日本のビールの現状を消費者こそが嘆き、「もっと美味しいビールを」と訴えるべきです。



んで
弁いちのメインビール ガージェリーはもちろん麦芽とホップだけで作らているんですけどね。