昔話


年寄りの昔話は嫌われがちです。


しかしながら自分自身が年寄りに近くなってくると、不思議と昔話を聞きたくなってくるのです。


昔「ルーツ」という小説 TVドラマがアメリカで大変流行ったように、自分のルーツをたどりたくなってくるのでしょうか。自分が体験したことはある程度覚えていても、父の代、祖父の代と遡って知りたくなるのは若いときには考えられないことでした。


実際、亡くなった父も60代になって明治初期、それ以前の江戸期の我が家の由来を調べようと東京まで出かけてあれこれ確かめていた時期がありました。


私の場合、昔の話を聞きたくても、父母も祖父母も他界していますし、皆昔話を好んでする方ではありませんでしたから、今「知りたい!」と思っても探る手立てがありません。残るのは親戚。


実はつい先日叔母が亡くなって葬儀がありました。


亡くなった叔母自身からも様々な昔話を聞いてはいたのですが、彼女が亡くなってしまって残るのはもう一人の叔母のみになってしまいました。戦争前、昭和前期の「弁いち」の様子を聞けるのはひとりだけになってしまったのです。


家族のルーツというよりも、店の歴史なのに、たった90年うち最初の30年くらいをまるで知らないという迂闊さ。こんなことは祖父や父からもっと聞き、書き留めておくべきだったのでしょうね。若い頃にはまったく思いも至りませんでした。


戦争ですべてが焼け、写真もほとんど残っていませんし、戦後の区画整理で街の自体の有り様も変わっています。


今回葬儀の合間に叔母から聞く話は「へーー」「ああ、そうだったのぉ」「知らなかったぁ」の連続でした。


店のことなど他人には興味のないことですから、本来なら家族だけでもきちんと伝えていかなくてはならないんでしょうね。


皆さんはお年寄りに聞いていますか?家族のルーツ。


三代前の家庭の様子、仕事の具合、四代前の家族の名前。きっときけば「へーーー」とおっしゃるはず。