お節料理その2


昨日は黒豆のお話をしました。


実を言うと、祖父 父の時代は江戸の料理を継承するお節料理でしたから、黒豆は献立には入っていませんでした。北海道の黒豆を甘辛く煮る仕事は家庭料理にはありましたが、今普通に出回るぷっくりと柔らかく焚いた黒豆(葡萄豆ともいいます)はあくまで関西の仕事で全国区ではなかったのです。今では黒豆はお節料理に入るのが当たり前のように思われていますが、時代をちょっと遡るだけでも事情は違うのですね。



さて、
お節料理のもうひとつのつきもの「田作り」


鰯の干したヤツなのになんで田作り?と思いますよね。江戸の昔、畑の肥料として鰯を干したものを使っていました。畑に棒で穴をあけて鰯を放り込む、カムイ伝にそんな記述が出てきます。で、田を作って豊穣を願うという意味があるですね。


鰯の干したヤツは町内友人の乾物屋さんに用意してもらいます。もちろん国産。


田作りの決め手はから煎りです。


大きな鍋でゆっくりと煎り、パキッと折れるほどまで煎っていきます。焦がさずにぱりぱりと。ここまで煎っておけば常温で長い時間保存が利きます。



味付けは濃い口醤油 味醂 酒 砂糖 合わせたものをクツクツと煮てとろみがつくほどまで仕上げて、最後に水飴を入れます。この煮詰め具合によって田作りに照りが出るか出ないか、一週間常温においてもその照りを維持できるか、たれが絡みついているのにパキパキとした歯触りが残るか。。。が決まります。逆に煮詰めすぎると全体が飴のようにくっついて離れなくなってしまいます。この煮詰め具合がとても難しい作業です。こればかりは数字化したり口で説明したりも困難で、私は祖父に「これくらい!」ととろみをみて覚えさせられました。ありがたいことに今でもそのときの記憶が基準になっています。



沸騰したたれを煎ったいわしにからめます。鰯に対するたれの分量は素人目には驚くほど少ないのですが、合わせる内にぴったり決まるという仕事なんですね。


上手に出来た田作りは1-2週間常温でおいても全く変化することなく美味しく食べることができます。