産地特定食材


食材の産地を特定したり、作り手を特定できるようになったのは確か平成に入ってからのことだったように思います。


店ではできる限り作り手や産地を明確にしたいという思いをつのらせ、さらにつっこんで作った方の顔が見える食材を使えるようにしてきました。


ところがそういう職人の思い入れが世間的には企業のマーケッティングになり、商品をブランド化が戦略になると、今話題になっている偽証問題が現れてしまいます。




私たちは日々食材の単価と向き合い、原価計算が身についてしまっていますので、外食するときにメニューを見たり、TVのグルメ番組を見るたびに、「えーーー!この産地特定食材をこの値段じゃぁ無理」とか「収穫時期が短い食材をシーズン単位でメニューに載せるためには冷凍管理か、産地を変えていかなければ無理」とか「漁獲が安定しない希少食材をこの規模の店でメニューに載せるのは至難のはず」などとひとつひとつの献立の背景や単価が見えてしまいます。


たとえば、漁港のすぐ脇にある料理店の一品、○○港の海鮮丼¥980(マグロ 烏賊 甘エビ 鰺 いくら 鯛)・・・なんてよくTV旅番組で見そうなランチ。職人的に見れば地元食材は鰺くらいのはず、・・・でなければ商品として成り立ちません。


だからといって、私が思うのは「偽証だ!」ではなくて、職人的には「作って売る方も大変ねぇ」というほどの思いだけだったんですけどね。¥980で地産地消の豪華海鮮丼って・・・そりゃ無理なんであります。


表現の偽りも内輪話でつっこみを入れたり、笑いながらチャチャをいれていた内はよかったのですが、SNSであっという間にうっかりさんが広がり、メディアでの徹底的なバッシング、慣れない管理者のオタオタのいいわけ。「これくらいなら・・・」と広げた風呂敷が収まらなくなってしまうと言うハラハラドキドキに食産業内部にいる人間は呆然とするだけです。ちょっと前なら話題にもならなかったはずなのに。。。。って。


産地や作り手を特定したからって、その単品で劇的に味が変わるものでなければお客様にアピールするのを控えるか、もしくは「嘘は言ってないモンね」というぎりぎりの表現でブランディングをするかの二極化するのかも。


さて、これからどうなるんでしょ、日本の食文化。






ついでに言えば、地元ホテルでも「遠州カレー」に地元のジャガイモ タマネギを使っていなかった時期があったと、記者会見です。  ジャガイモタマネギです。あげつらってどうする。どうかしてるぜ。。。。って感じです。民度がしれて恥ずかしいほうが大きい私。


なんでもかんでも地産地消をうたうことには問題ないんでしょうか・・・ネ。


そういう場合、企画会議とかで決まって、現場の職人は献立にもだえ苦しむんでありますよ。